Holistic Communication Card ができるまで

心の治癒力を呼びさますホリスティックコミュニケーション
私たちが Holistic Communication Cardを開発するまでのストーリーをご紹介します

How we build Holistic Communication Card
コミュニケーションが癒しになる時

最初に、カードにしようとしたきっかけを教えてください。

私たちのカードは代表の黒丸が主宰しているホリスティックコミュニケーション実践セミナーが基になっています。このセミナーでは心療内科・緩和ケア医黒丸が治療として磨き続けている患者さんの「心の治癒力」を呼びさますためのコミュニケーション法を学ぶことができます。実際の臨床現場で治療として使われているものなので非常に有用なコミュニケーション法であることは間違いないのですが、完全に使いこなそうとすると、習得にかなりの時間を要します。すべてを網羅することは無理でも、このエッセンスをもっと多くのセラピストさんやケアなどに関わる方が使いやすくする方法はないかな? とずっと考えていました。

それがなぜ「カード」になったのですか?

ホリスティックコミュニケーションという手法は、問題や悩みの解決についての考え方が一般的なものとは異なっています。また、傾聴が主となっている一般的なカウンセリングとは違い、カウンセリング中に質問をするという点も大きく異なる点です。通常私たちが当たり前だと思っているものの見方や考え方とは違う視点を持った上で、解決に向けて有効な質問をしながら、しっかり傾聴するというのは本当に難しいのです。そのためセミナーにおいても、多くの受講生の方が「質問」に注力しすぎてしまい、その他のことが疎かになるということがよく起こっていました。

中でも一番重要なポイントは「ものの見方」や「考え方」なのですが、これは日常生活の中で意識していかないとなかなか変化しづらいものなのです。なぜならこの「ものの見方」や「考え方」は無意識レベルの話になるからです。このため、普段の生活の中で意識し続けるということもまた難しいという現実がありました。
そこで質問以外の所にも意識が向くように、最終的には意識しなくてもものの見方や考え方を意識せざるを得ない仕組みを作ること、そして普段のセッションで使いやすくすることを考えていた時に、世の中にはカードを使った様々なセッションがあることを知りました。

しかし、カードのセッションというのはどうなのだろうか? と、実際には疑問に思ったこともありました。ですが、実際にある他のカードを試してみたところ、良いものが沢山ありましたし、カウンセリングとは異なる期待感やある種のゲーム感覚があり、カードならではのワクワクが感じられたのです。

それで「カード」にしようと考えたのですか?

そうです。ただ、多くのカードは抽象的なインスピレーションを生み出すものであり、具体性に欠けるという点が気になりました。しかし、それは仕方のないことなのかもしれません。多くのセラピストさんやカウンセラーさんは「圧倒的な質問の力」を知らないからです。

けれども私たちには研鑽され続けたスキルや経験の蓄積があります。それをカードに組み込むことで、クライエントさんの心の治癒力を呼びさますセッション、セラピストさん自身のケア、そしてセラピストさんのコミュニケーション力のUPの3つが叶うカードができるのではないかと思いました。

そこからHolistic Communication Cardはどのように作られていったのですか?

まずは、どのような質問が良いのかを考えるために、私たちが考え付く限りのシチュエーションでの質問を書き出してみたところ、この時点で200個近くの質問が上がってきました。さらに黒丸先生にも質問のアイディアを頂きました。そこからカードに使えそうな質問を選び、まずはプレカードを作って実際に100人近くの方にモニターをさせていただきました。

その結果をもとに、さらに精査し磨きをかけて48種類の質問ができ上りました。

次にこのカードを使う時のルールを決めました。実はこのルールが非常に重要で、ルールにのっとっている限り、クライエントさんは傷つくことはありませんし、セラピストさんが疲弊することもありません。またものの見方や考え方、セラピストさんの在り方を意識しなくても意識せざるを得ない仕組みになっているのです。

それからテキストを作成し、カードや箱のデザインを考え制作し、業者さんを探し発注しました。本当にDIYです。ゼロから全部作り上げていきましたので、完成品が納品された時は本当に感動しました。

どのような点に苦労しましたか?

最大の苦労はホリスティックコミュニケーションをどのようにカードに落とし込むのか……という点です。作り始めると、あれも大事、これも大事となってしまって、カードで行う意味がどんどん薄れていってしまいました。

そこで、カウンセリングという一定の文脈があるからこそ深く話を進めていけるスタイルを手放し、真逆の文脈のないランダムな質問を投げかけるスタイルにすることにしました。

ただ、それによって多くの人が苦手としている、話の方向性を決めていくところや、最後に話をまとめてクライエントさんへフィードバックしていくところの練習が集中的にできるようになり、この2つのポイントとカードによるランダムな質問によってクライアントさんの無意識に上手に働きかけることができるようになりました。

とはいえ、カードの力に手ごたえはあったものの、実際に使うまで、このランダムな質問のスタイルがどのように作用するのか。これがクライエントさんを傷つけることはないだろうか、セラピストさんを疲弊させてしまうことはないだろうか……。そんなことをずっと考える日々が続きました。

ついに完成したHolistic Communication Cardはいかがでしたか?

正直なところ私たちは想像を超えるHolistic Communication Cardの可能性に驚いています。それは本当に受講生の皆さんのおかげです。Holistic Communication Cardベーシックコースの受講生の方のほとんどが、医療従事者やセラピー、対人支援業務に携わっている方です。そして、実際にみなさんが現場で使ってくださることで、私たちの想像を超えるような活用方法が生み出されていっています。そして、それをシェアしてくださることで、他のセラピストさんの気づきとなっているという善循環が生まれています。

今後の目標はありますか?

専門的な技術や知識ではなく、コミュニケーションそのものが癒しを生み出すことを、一人でも多くの方に知っていただくことが目標です。

実際にセラピーやカウンセリングを受けて傷つかれるクライエントさんがいらっしゃいます。一方で傷つき疲弊するセラピストさんもいます。その多くはセラピストに必要なコミュニケーションを知らないことで引き起こされています。

Holistic Communication Cardを通してクライエントさんの心の治癒力を呼びさますセラピストさんが増え、多くの方の希望や可能性が輝くことを願っております。

また、カードを使われるとセラピストさん自身にも気づきや癒しが起こります。こちらの部分を私たちがサポートさせていただくことにより、セラピストさんが今よりさらにクライエントさんの「心の治癒力」を呼び覚ますケアができたり、コミュニケーションが可能になっていかれたりすると確信しております。